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(工房がじまる)
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羽地 直子 |
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織りを始めて18年になります。 |
反数を重ねるごとに、宮古上布に魅了されています。そして、 |
子や孫にも伝えていきたいと強く思う様になりました。おばあ達の |
手で紡いだ一本一本の糸を大切に織り込んでいきたいです。 |
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製作者のコメント
宮古上布を始めたきっかけは機織をやってみたいと思ったからです。すぐに宮古織物事業共同組合に行き、後継者不足などの様々な問題を抱える宮古上布の現状を知ったことで、自分が生まれた島の織物を織ろうと思う気持ちも強まり、そのまま組合に入り勉強を始めました。
織り始めた頃はよく糸が切れてしまい、また柄を合わせることがとても難しくてなかなか作業が前に進みませんでした。
まだ上布についての詳しい知識がなかったので苦労しましたが、織るほどに布のとりこになっていきました。
初めは一反織り上げるのに2年ほどかかってしまいましたが、出来あがったときは本当に嬉しくて、次はどんなものを織ろうかと楽しくて仕方ありませんでした。その気持ちは20年経った今も変わりません。
組合で約10年間、織りについての知識を学ばせていただいた後、独立し、4年ほど前に“がじまる工房”を設立しました。
組合にいたときには全て準備が整った環境で織らせてもらえていたので、工房を設立してからはその準備をすることの大変さがわかりました。
糸を績んでくださるオバァたちと話をするのが楽しみで、その日の気持ちで糸の太さが変わったりするのも人の手だからこその良さだと思います。
宮古上布の抱える問題として糸の不足や糸績み技術者の減少などがありますが、そんな中でも糸を績んで譲ってくださるオバァたちには心から感謝しています。
だからこそ、工房では糸を大事に扱う気持ちを一番大切にして欲しいと伝えています。
糸の一本一本にはオバァたちの心が込められているのだから、そこに自分の心を重ねて織っていくような気持ちで織りと向かい合っています。
今後の課題としては、工房で織りをしている人たちが自分自身のデザインした宮古上布が織れるような技術を身につけるように勉強会に参加したり、実践してみたりと、切磋琢磨していきたいです。
まだまだ分からないことも多くあるので、たくさんの方たちと話し合いながら今後の宮古上布が発展していくように努力していきたいです。
下の画像クリックで羽地直子さんの作業風景がご覧いただけます。
羽地 直子さんと出会って
羽地 直子さんに初めてお会いしたのは空港のロビーでした。
沖縄を訪れるのも飛行機に乗るのもそのときが初めてで、慣れないことの連続に緊張して張りつめていた私の気持ちを優しい言葉と笑顔でほぐしてくれました。
そして、とても明るく和やかに接してくださるので初対面でも臆することなく話を聞くことができました。
今でも沖縄を訪れ、直子さんの笑顔に出迎えられるとすごく安心させられます。
そんな直子さんの織る宮古上布には、やはり直子さんらしい優しい風合いと丁寧に織り上げられたことが伝わってくるような気品が感じられます。
少しだけ直子さんが織っているところを拝見させていただいたことがあるのですが、その機の音はとても心地よく私の心に響き、どこか懐かしさにも似た気持ちを感じさせてくれました。
直子さんが心を重ねて織り上げる上布からは優しく包み込んでくれるような安心感と温もりがあります。
工房がじまるという自身の工房を設立している直子さんですが、宮古上布に興味を持って習いたいと訪ねてきてくださる方たちの存在はとても嬉しいものだといいます。
“私自身まだまだ勉強中の身なので分からないことも多いですが、分からないことや経験したこと、感じたことを工房のみんなで話し合い、励ましあって向上してゆきたいと思っています”常に、学んでいこうとする姿勢を大事にしたいのだと直子さんは言います。
直子さんの小学四年生になるお孫さんは幼稚園の頃から織りを始めたそうです。
幼稚園の頃は身長が足りなくて織り機に座っても足が踏み木に届かず、立ったまま織っていたのが、今ではようやく座っても足が届くようになったのだと、とても嬉しそうにお話してくださいました。
直子さんの娘である美由希さんが二十歳の頃に宮古上布を教えてほしいと言ったとき、直子さんはまだ早いといって美由希さんが23歳になるまで待ってもらったそうです。
その理由には、自分ひとりでも大変なのに糸不足などの様々な問題を娘にも背負わせていいのか、と大変悩まれたそうです。
今では、工房全体の糸を集めるのも直子さんの仕事で、大変ではあるけれど、糸を績んでくださるおばぁたちとコミュニケーションを取りつつ糸集めをされているそうです。
今後の抱負としては、工房にいる人たちが自分自身の織りたいものを織れるように力をつけていくのを応援したいと話してくださいました。
みんなを優しく見守ってくれる直子さんは今後も温もりのある上布を生み出し、私を含め多くの人の心を穏やかにしてくれます。
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取材者・文/小池佳子 2008.09
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