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(工房がじまる) |
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羽地 美由希 |
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子供の頃から、いつもそばにあって、母の手伝いをしている内に |
興味を持ち、23歳で織りの世界に入りました。 |
宮古島のおばぁの手から作られるブー(苧麻)が大好きです。 |
昔からある模様(絣)が目標です。 |
昔ながらの手作業を学んで、そこから新しいものを作っていき |
たいです。 |
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製作者のコメント
幼いころから、母が織り機に座って宮古上布を織っているのを見ていて、その手伝いをしていたこともあり、宮古上布はいつも身近にありました。
そのため学生の頃からずっと織ってみたいと思っていたのですが、本格的に学びたいと思ったのは二十歳の頃でした。
すぐに母に教えて欲しいとお願いしたのですが、“今はまだ早いから”と断られてしまいました。
それから3年経ったときに、ようやく教えてもらえるようになったのですが、実際に織りを習い始めると母がなぜあの時にまだ早いと言った理由が分かりました。
織りの仕事はずっと糸と向き合い集中して臨まなければならないのですが、まず、織り機に長時間座るということが出来ませんでした。
若いため、色んなことに興味をとられてしまい、その我慢が上手に出来ずに苦労しました。
もしも、二十歳のときから始めていたら、今も続けていたか分かりません。
あの時、母にまだ早いと断られてよかったと、今は心から思います。
習い始めの頃はまず、上布ではなく、宮古織りで織りに必要な工程を覚えていきました。
ようやく無地の宮古上布を織らしてもらえるようになったのですが、一反織り上がったときの感動は今でも忘れられません。
“柄が入ったらどうなるんだろう。もっと様々な宮古上布を織ってみたい”
一反織り上げた喜びが次の作品づくりへとつながっていきました。
それは4年経った今でも変わらず、さぁ織っていくぞ、と座ったときにもう次は何を織ろうと考えてしまうほどです。まだまだ技術が未熟で作りたいものが作れないという歯がゆさがありますが、次に作りたいものが尽きず、知れば知るほど宮古上布に魅力を感じていきます。
母からは主に基礎を習い、下地 達雄氏の母にあたる、下地 みつさんからは織りに向かう姿勢や忍耐強さを教えていただきました。そして、18年度からは保持団体を通して絣括りについて学んでいます。宮古上布に携わる多くの方々に教えていただいたことのひとつひとつが次に新しく学ぶことの助けとなっています。まだまだ学ぶことは多いですが、作品づくりは楽しく日々やりがいを感じています。
今、現時点での課題として、絣括りでは、デザインと、細かい絣を。染色では、草木染めと藍染めの勉強を。織では、経緯絣の織り方を学んでいきたいと思っています。
下の画像クリックで羽地美由希さんの作業風景がご覧いただけます。
羽地 美由希さんと出会って
羽地美由希さんと初めてお会いしたとき、なんて沖縄が似合う人だろうと思いました。
沖縄で生まれ育った彼女に対してそういった印象を抱くことは少しおかしいのかもしれませんが、それ程までに美由希さんは明るく元気で、なにより沖縄の陽射しに負けないくらいの笑顔で接してくれるので、私は会うたびに元気を分けてもらっている気持ちになります。
子供の頃から、いつも宮古上布がそばにあり、織りの世界に入って20年というベテランの母・直子さんのお手伝いをしている内に次第に興味を持ち始め、約四年半前から本格的に織りの世界に入ったという美由希さんですが、そんな彼女の宮古上布に対する情熱は並大抵なものではなく、お話を聞かせていただいたときにはそのあまりの熱意に圧倒されてしまいました。
全身全霊で宮古上布に取り組み、まっすぐに向かい合おうとする彼女の想いは作品にも表れていて、まるで糸の1本1本に彼女の魂が込められているかのような力強さや、優しさ、前向きな熱意が見ていて感じ取られます。
彼女は自分自身に厳しく、些細な疑問に対しては自分自身が納得するまで時間や努力を惜しみません。宮古上布という伝統に果敢に挑んでいく姿や何事にも積極的に学ぼうとする姿勢は、手がけることは違えども見ていて励みとなり、背中を押してくれます。
決して糸を雑に扱わないこと、それが宮古上布の世界に入って1番はじめに母に教えてもらったことだと美由希さんはいいます。
“糸1本1本には糸を績んでくれた人たちの心が込められているので、絶対に糸をまたいだりしてはいけない。私たちは、糸を績んでくださる方々に感謝しながら、糸を染めたり、織ったりしていきます”
そう話す彼女の手は、とても儚いものを扱うかのように優しく丁寧に糸に触れていました。
ただ宮古上布の作業工程を知ることだけに精一杯だった私に、この美由希さんの言葉はとても印象に残り、私にとっても大事な教えとなりました。
400年以上もの長い年月受け継がれてきた宮古上布という伝統の魅力は、出来上がるまでの過程だけでなく、宮古上布に関わる人たちの心や背景にもあるということを学ばせていただきました。
彼女の明るさや笑顔、そして前向きな姿勢やその向上心はきっと宮古上布の今後を照らし、活気づけていってくれるに違いありません。
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取材者・文/小池佳子 2008.09
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