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(工房風樹)
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砂川 照子 |
昭和20年2月6日 生まれ |
平成10年7月~平成16年6月 藍染の十字絣に魅せられて、宮古 |
織物事業協
同組合にて織りと藍染めを習う。 |
平成16年7月 自宅で織り始める。
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宮古島の苧麻で手績みの糸を使って、地球にやさしく、人にやさし |
い織物を織っていきたい。例えば、藍建の場合、琉球藍やインド藍 |
を灰汁で醗酵建したもので染め、他の色も宮古島にある植物で染め、 丁寧な仕事をしていきたい。 |
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製作者のコメント
私が、宮古上布の織りを始めたのは、平成10年からになります。
織りをやってみたい、という興味から宮古上布織物事業協同組合へ研修生として入りました。
宮古上布について全くといっていいほど何も知らなかったので、最初のうちは戸惑うこともありましたが、織りは楽しく、自分に合っているなと感じました。
組合では、長年宮古上布を織っておられる先輩方も多くおられて、たくさんのことを教えていただきました。最初のころは、宮古上布ではなく、経糸が綿で緯糸がラミーの宮古織を織って、織りの手順を学んでいきました。
織りに慣れてくると、ようやく手績みされた苧麻糸を使って織らせてもらえるようになるのですが、手績みをされた糸はそれまで使っていた糸とはもちろん素材が異なり、また糸績みされた方によって一本一本撚りかけ具合が違うので、その糸の扱いをするのがとても難しく大変でした。
6年ほど組合で学ばせていただいた後、独立し、今は重要無形文化財砧打ち継承者である主人が設立した“工房 風樹”で、自分のペースで織っています。
家事と両立しながらなので、なかなか進みませんが、時間をかけてゆっくりと織っていったものが完成したときは“やっと出来たぞー”と本当に嬉しく思い、その気持ちが次に織るものへとつながります。
織りの作業は単調で、地道にコツコツやらなければならないものなので、心から織りが好きでないと続けることが難しいと思います。
気持ちが乗らず、はかどらない日もありますが、常に織りを楽しいと感じる気持ちがあったからこそ、今まで続けてこられました。
普段から家庭で使うものでも、化学物質が含まれていないものを使用しているのですが、着物も直接肌に触れるものなので、肌の弱い方でも安心して着られるような宮古上布を作ることが、私の今後の課題であり目標です。
宮古島には、多くの植物があるので、その中でも抗菌作用があるもの、肌に優しい植物で染めた糸で上布を織っていきたいです。
また、“工房 風樹”のオリジナルの宮古上布を、主人と息子と力を合わせて作っていこうと考えております。
まだまだ勉強中ですが、自分の作りたいものを形にできるように頑張りたいです。
砂川 照子さんと出会って
砂川照子さんと初めてお会いしたのは、重要無形文化財砧打継承者であり、照子さんの旦那さんでもある砂川 猛氏に、砧についてのお話を聞かせていただくため、風樹工房を訪れたときでした。
照子さんは緊張している私を気遣って何度も声をかけてくださり、美味しい沖縄の果物を勧めてくださいました。何人かの織りをされている方と一緒に訪問したのですが、照子さんの周りでは笑いが途切れることがなく、照子さんが何か発言するたびにみんなが笑顔になっているような、そんな印象を抱きました。
その後も何度かお会いし、お話を聞かせていただいていますが、とにかくいつも笑顔で、明るく元気なので、私もつられて笑顔になって自然と余計な力が抜けていくのを感じます。
そんな照子さんらしく、体に優しい宮古上布を作ってゆきたいという抱負を聞かせてくれました。
“自然素材で抗菌作用があるものや染料に薬草を用いるなど、地球にも人にも優しい宮古上布を作ることを心がけていきたい。
デザインが良いものは必要だが、現段階ではそういうコンセプトでやっていきたい”
近年、人口密度や住宅環境の変化、人工添加物を多く含んだ食物が原因でアトピーなどの肌の弱い人が急速に増えてきたことから、体への影響や触り心地、肌へのいたわりを考えた宮古上布を作っていきたいと、照子さんはいいます。
宮古島は“薬草の島”と呼ばれるほど、様々な効用を持つ植物が自生しているそうです。
私自身肌が弱く、すぐにかぶれたり赤くなったりしてしまうので、着る人の肌のことまで考えてくれている照子さんのこの取り組みは、自分にも身近なものに感じられて非常に嬉しく思いました。
“染色に関しては退色などの問題もあるけれど、そういった問題を踏まえて取り組んでいきたい。宮古上布は手作業でやっていくものなのだから工夫を凝らしてより良い上布を作っていきたいです”
数ある植物染料の中では月桃(げっとう)が1番好きだという照子さん。
春から初夏にかけての生命力に満ち溢れ,活力のみなぎる季節に白い花を咲かせるという月桃の花は、いつもはつらつとして明るく、そして失敗を恐れずに取り組もうとする照子さんにぴったりだと思いました。
何か新しいことを始めようとするときには、いつも怖気づいてしまう私ですが、前向きに挑んでいく照子さんの情熱や姿勢は、お話を聞かせていただく中でとても勉強になりました。
“地球にも人にも優しい宮古上布”
その取り組みは、宮古上布に新しい風を吹かせてくれることだと思います。
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取材者・文/小池佳子 2008.09
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