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(工房がじまる) |
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桃原 初枝 |
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宮古上布の魅力は、手績みの苧麻にあると思います。 |
その日その日で変わる苧麻糸に触れるのがとても面白く、 |
何もしていない時間があれば織りに向かいたいと思うほど、 |
織りが楽しくて仕方がありません。 |
今後は着尺の総絣が織れるようになれたらいいなと思って |
います。 |
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製作者のコメント
私は織りをされている方々の姿を見て、いつか自分もやってみたいなと興味を持っていたものの、自分には根気がないので宮古上布の世界に入るのは無理だろうと諦めていました。
約2年前、羽地 直子さんに“やってみない?”と勧められて、“自分にもできるだろうか、とりあえず一反織りあげてみよう”と思い、“工房 がじまる”で織りを学び始めました。
実際に宮古上布の製作に携わるようになってからは、織りをされている方々がやっていたことや、悩んでいたことが分かっていき、新しいことを覚えていく度にそれが繋がっていくのがとても面白いと感じます。一反織りあげることを目標に入った宮古上布の世界でしたが、織りあがる頃には宮古上布は私の生活に欠かせないものとなっていました。何より自分にも織れたのだという達成感がとても気持ちが良くて、この先もずっと続けていきたいと強く思いました。
宮古上布の魅力は手績みの苧麻糸にあると思います。
その美しさもそうですが、その日その日で糸の扱いが変わるところが、とても面白いです。
手績みの苧麻糸は切れやすく、また絣合わせが大変で、なかなか織りが進まない日が続いたときには、“やっぱり自分には出来ないかな”と不安に思いますが、それでも周りの人に助けてもらいながら織り進めていくうちに少しずつ自信がついていきました。
“なぜ出来なかったのか”その理由が分かっていくことが楽しくて、家にいて何もしていない時間があれば勿体なく感じるほど、織りに夢中になっています。
織りを始めて日が浅いので、分からないことはまだまだ多くありますが、たくさんのことを勉強して、織る以外のことも覚えていきたいです。
“織りの工程が自分一人でできる様になること”
“着尺で十字絣の宮古上布を織ること”
これが私の現時点の目標なのですが、その大きな目標に向かって今の自分ができることを精いっぱいコツコツと努力していきたいです。
下の画像クリックで桃原初枝さんの作業風景がご覧いただけます。
工房がじまる
桃原 初枝さんと出会って
桃原さんは、9歳と1歳のお子さんがおられる、とても穏やかな優しい口調で話される方で、和やかな雰囲気のなかお話を聞かせていただくことが出来ました。また、桃原さんはまっすぐに相手の目を見てお話をされる方だったので、その大きくてきれいな瞳が印象として特に強く残っています。
織りをされている方の姿を見ているうちに宮古上布に興味を持ったという桃原さん。
しかし実際に宮古上布の世界に入り、自分自身が織りに関わってみると、新たな宮古上布の魅力に気づくことができてすごく楽しいといって嬉しそうに笑われていました。
桃原さんだけでなく、宮古上布の製作に携わる方は、皆さん口々に“織っていて面白い”や“楽しい”という言葉を使われます。そして何より宮古上布のことを話されているときの表情が本当に楽しそうなので、私もいつか宮古上布を織ってみたいなという気持ちを抱きます。
今回、桃原さんにお話を聞かせていただいたときも、織ってみないと分からない宮古上布の魅力とはどんなものなんだろうとその魅力を知りたくなったと同時に、羨ましい気持ちになりました。
“織りと真正面から向き合っていきたい”
技術的な面ではまだまだ未熟で勉強が必要ですが、気持ちの面でいい加減なものや雑なものを織りたくないと話す桃原さん。その言葉からは宮古上布への誠意と誇りが感じられました。
後継者問題を抱える宮古上布ですが、桃原さんのように精一杯の力で宮古上布に取り組む人がいる限り、宮古上布の未来は明るいものになるのではないかと思います。
真面目にコツコツ勉強して、少しでも熟練者の方に近づけるように頑張りたいと話す桃原さんの力強い表情を見て、今後桃原さんが織られていく作品が早く見たくて仕方がない気持ちになりました。
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取材者・文/小池佳子 2008.09
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