|
(工房がじまる) |
|
|
砂川 真由美
|
|
手績みの糸が出す風合いがとても好きで、機に座っている時 |
は、色んな事を忘れて、織りに没頭しています。宮古上布 |
は織り上げるのも、本当に気の遠くなる作業です。織り |
に入る前の工程は更に大変な作業ですが、自分でできるよう |
になりたいです。 |
宮古のおばあ達の”績む”糸に日々感謝して、楽しく機織 |
りしたいです。 |
|
|
製作者のコメント
幼い頃から、母が宮古上布を織っているのを見てきて、またその手伝いで織りもしていたのですが、だんだんと織るうちに手績みの苧麻糸の魅力に気付き始め、ずっと織りをしていきたいと考えるようになりました。宮古上布について深く学んでいこうと、母の工房に入り、本格的に宮古上布に取り組みだしたのが平成18年です。
始めたての頃は、織りの途中で糸が切れても上手く繋ぐことが出来なくて、その都度母を呼んでは糸の繋ぎ方を教えてもらいました。
初めて織りあげたものは、母の手を借りることが多くあったため、あまり達成感は感じませんでした。2反目は自分一人の力で織り上げることが出来たので“やっと終わった~”という安堵と、織り上げたことへの嬉しさで胸がいっぱいになったことを覚えています。
織りをしていて楽しいことばかりではなく、時には苦しいときもありますが、織り上げたときの気持ちがあるから続けてこられた、そしてそれがあるからこの先も頑張っていけるのだと思います。
宮古上布は出来上がるまでの工程が多く、とにかく手間も時間もかかる織物です。
しかし、私はその手間のひとつひとつが素晴らしいからこそ、宮古上布は美しいのだと思います。同じようなものに見えてもどれ一つとして同じものはないというところに宮古上布に魅力を感じます。
私が一番織りをしていて楽しいと感じるときは、杼を通すときです。
杼が通るときに鳴る音は、すごく気持ちが良くて心が躍ります。宮古上布が生み出されていくこの音を聞きながら織り機に向かう時間は、今では私の生活にとって欠かせないものとなっています。
手績みの苧麻糸は湿度や気温に左右されやすいので、織りにくいと感じる日もありますが、
織り続けていき絣が出てくると、すごく嬉しく思います。
今はまだ、準備してもらったものを織るだけなのですが、今後は自分でデザインしたもの、柔らかくて優しい、でも目を引くような宮古上布が織れるようになりたいです。
まだまだ駆け出しで、分からない事だらけですが、宮古の自然と共に生きる宮古上布はとても素敵で、いつか自分の織った宮古上布を着ている人の姿が見たいなと思います。
目標は十字絣を織ること、その目標に向かってこの先も頑張りたいです。
下の画像クリックで砂川 真由美さんの作業風景がご覧いただけます。
|
|
|
|
工房がじまる
砂川 真由美さんと出会って
砂川真由美さんと初めてお会いしたのは、真由美さんの母親である羽地直子さん、そして妹の美由希さんと出会ってしばらく経ってからでした。
お会いする以前に写真でお顔を拝見していたこともありますが、真由美さんの明るい笑顔は、直子さんと美由希さんとよく似ていたので、なんだか初めてお会いした気がせず、緊張することなくお話を聞かせていただくことが出来ました。
作業中の真由美さんの姿からは、糸や機とまっすぐに向かいあっていることや、ひとつひとつの手間を惜しまずに宮古上布を作りあげていることが伝わってきて、宮古上布に対する真由美さんのひたむきな想いを感じることができました。
同じようなものに見えてもどれ一つとして同じものはないというところに宮古上布の魅力を感じるのだと真由美さんはいいます。私自身も宮古上布について深く知っていく中で、糸の一本一本ですら異なるところに一番の魅力を感じるようになりました。
お天気ひとつによって糸の扱いが変わったり、織りやすかったり織りにくかったりする宮古上布からは、繊維になった後も息づいているかのような苧麻の生命力や力強さが伝わってきて、陽の光を受けて輝く宮古上布からは神秘的なまでの美しさを感じます。
そのため、完成するまでにかかる手間のひとつひとつが素晴らしいからこそ、宮古上布は美しいのだという真由美さんのお話に、非常に納得させられました。
『今後は柔らかくて優しい宮古上布が織れるようになりたい』
今、自分に出来ることを精一杯やろうと宮古上布へ取り組む真由美さんのまっすぐな気持ちは、今後の作品にも織り込まれ、見る人に清々しい気持ちを与えてくれることだと思います。
|
取材者・文/小池佳子 2008.09
|
|