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風樹の嘆(ふうじゅのたん)という言葉があります。
静かに止まっていたいのに、風に吹かれてしまうと揺れざるをえない樹木のように、子供が親孝行をしたいと思うときには、
すでに親が亡くなっていて親孝行をしようにもできないという嘆き。
孝行をしたくとも出来ない嘆きを風に乱される樹木の動揺に見立てて、親の生きているうちに孝行はすべきだと説くこの諺が、
工房 風樹の名前の由来となっています。
設立されたのは、重要無形文化財砧打継承者である 砂川 猛 氏。
工房風樹は、2年半ほど前から砂川氏のもとで砧打の修行を始めたご子息である一人さんと、
織りをされている奥さんの照子さんのご家族三人でされています。
お三方とも大変穏やかで、明るく、仲がよいので工房を訪れた際には笑い声が絶えませんでした。
窓からは陽射しが差し込み、風が通り抜ける工房は心を落ち着かせ
てくれて、どこか懐かしさを感じさせてくれます。
そして、宮古島中に響くんじゃないかというくらいの大きな砧の音は、
重要無形文化財砧打継承者という砂川氏の存在の大きさを教えてくれるように聞こえてきました。
“信用、丁寧、感謝”
工房のこだわりを聞かせて下さいと尋ねると、砂川氏はこのように答えてくださいました。
この3つの心得は、砧打ちだけに限らず全ての整理加工の修養と言えるそうです。
修養とは知識を高め、品性を磨き、努力するという意味だそうで、どこまでも砧の技術を高める努力を惜しまない砂川氏は、
匠と呼ばれるのにふさわしい存在だと感じました。
時々、宮古上布に携わる方々が砂川氏を慕って工房に集まり、
宮古上布について互いに意見を交換したり、色々な問題を話しあったりする機会があるそうです。
将来の宮古上布のためには、多くの人と話し合っていかなければならないと話す砂川氏の真剣な表情から、
宮古上布が抱える様々な問題に早急に取り組む必要があるのだということが伝わってきました。
“文化とは、技術だけを指すのではなく実際に日常の生活に取り入れてもらわなければ本当の意味で文化を守るとは言えない”
そのためにも、多くの人に宮古上布の魅力を知ってもらうことが必要だといいます。
共通した目標に向かって一丸となり、後継者育成に真摯に取り組む姿勢からは、強い信念と希望を感じました。 |
取材者・文/小池佳子 2008.09 |
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