織りあがった布には、染め垢や、織るときに毛羽立ちを防ぐためにつけた糊や 油が付着しているので、湯で洗い落とす必要があります。 木綿布に包んだ織りあがった布を釜の中の沸騰した湯の中に入れ、汚れやアク を浮きだした後、水洗いをし、脱水していきます。 その後、陰干しをしますが、半乾きのときに布幅を整えるために耳(布の端) を軽く引っ張って整えておきます。 草木染めの場合、はじめの煮沸作業は省略されます。草木染めの風合いが変わり、 色落ち、にじみが出たりするからです。 |
砧の文化をさかのぼると、かつては砧打ちは"打つ"ではなく"つく"と呼ばれていました。 先人たちは叩くことを"つく"と呼び、叩いてなめらかにすることを"なめす"、 さらにしわをのばし、肌触りをよくすることを"のす"と呼びました。 "つき、なめし、のす" その3つを兼ねた砧をすることによって、麻とは思えない絹のような美しい艶や、透明感が生まれます。 そして、袖を通したときに光をうけて輝き、風を通し、着た人にさらりとした爽やかな着心地の良さを感 じさせます。 現代風にいうとアイロンがけのようなものですが、その労力は比べものになりません。 まず、糊や油分の汚れが十分に落とされた洗濯後の布を乾燥させ、サツマイモの澱粉糊で布の表面にまん べんなく糊付けをします。 糊と水の割合はその日のお天気によって変わり、そのさじ加減は上布の出来上がりにも影響を及ぼします。 糊をつけるという単純そうに見えるこの工程ひとつにおいても、一瞬の油断も許されない熟練した技術が 必要とされています。 その後、半乾きの状態でイスノキという木から作られた3~5kg程度の木槌で布面を打っていきます。 一般には一反の布を仕上げるのに2万から2万5千回、砧を打ち落とし3~4時間ほどの時間を要すると いわれていますが、実際には12時間あっても足りないようです。砧を打つ時には一定のリズム、角度で打 たなければ布を傷つけてしまいます。 また、上布には撚りがあるため、洗いや乾燥をして幾分か縮んでしまった糸を、 引っ張りながら柄を整えていきます。 打ち付ける体力に加え、神経をも必要とする砧打ちだからこそ達人の技と呼ばれるのにふさわしく、 上布の深みを増すためになくてはならない仕上げの作業なのです。 |
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砂川 一人氏 | |||||||||